講座013

小型船舶の事故例とそこから学ぶべき教訓について(2023年版)

適切な見張りの実施と海象情報の事前調査の重要性

 2020年版コラム2021年版コラムに引き続き、本テーマでのコラム第3弾となりました。
 2023年に発生した事故のうち2つをピックアップし、今後のマリンレジャーに役立つであろう事故防止のための教訓を考察して紹介させていただきます。



〈目次〉

  1. 見張り不十分による事故
  2. 荒天による事故


事故例1:2023年1月3日 愛媛県 興居島沖

【事故概要】
総トン数3.8トンの遊漁船(A船)と総トン数5トン未満(長さ5.03m)のプレジャーボート(B船)による衝突事故



参照:Google Earth

 

A船の動き
釣り客6名を乗せて帰港する途中、船長は前方約1.0マイル(1,800m)先にB船を視認できたが、接近してから避ければいいと考え、釣り客と談笑していた。



話に夢中になりB船の存在を失念。B船と衝突した。




B船の動き
船長含む2名で錨泊しながら釣りを行っていた。



船首方向約0.1マイル(200m)辺りからA船を認めたが、普段他の船舶は避けてくれるので、今回も避けてくれると思い込み、釣りを継続した。



A船が100メートルまで接近しても針路を変える様子がないので、船長は大声で叫びながら両手を大きく振ったものの、時すでに遅く、A船の右舷船首とB船の右舷船首が衝突した。




*本事故に関する運輸安全委員会の報告書はこちら




【ポイント】
 本件のポイントは、A船・B船ともにお互いの存在に気付いていたにもかかわらず、衝突事故に繋がってしまったという点にあります。
 A船に関して原因は明白ですが、B船に関してもA船を視認した後の行動が不適切でした。




【教訓】
 船長が最低限守らなければならない7つの遵守事項にも含まれている通り、適切な見張りを常時行うことは船長としての義務になります。
 それは他船との距離がまだ遠かったり、錨泊中である場合でも例外ではございません。

 A船船長はお客さまの命を預かっている身として操縦と見張りに集中しなくてはいけませんし、B船船長は他船との衝突の恐れを感じたときは直ちに揚錨し、機関をスタンバイさせなければなりません。

 また、B船船長は注意喚起の手段として「大声で叫びながら両手を大きく振った」とありますが、広大な海において声やジェスチャーは想像以上に気付いてもらえません。
 汽笛や、救命胴衣に付属している笛を使用して注意喚起を行う必要があります。





事故例2:2023年3月2日 琵琶湖中部

【事故概要】
バスボート(FRP船)による転覆事故。
本船には船長とその同乗者合わせて2名が乗船していた。




06:50 沖島西側辺りの釣り場に向けてマリーナを出航。
07:30 釣りを開始。
間もなくして北西の風と波が高くなってきたので、沖島の島陰となる場所(下図①付近)に移動して再度釣りを行う。
09:00 波はそれほど高くなかったが、風が強かったので釣りを諦めマリーナに帰航する。
09:10 高波の影響で船内に水が流入。
ビルジポンプで排水したが追い付かず、船尾部の沈下により船外機が水に濡れて停止。
09:20 フットエレキを用いて航行しようと試みたが水の流入が続き、左舷側に転覆。(下図②付近)
09:27 落水後、同乗者は転覆した本船に上り110番通報により救助を要請した。
10:19 来援した警備艇により同乗者1名を救助。
10:48 救命胴衣が膨らんだ状態で漂流していた船長を、防災ヘリコプターで救助する。
その後船長は溺死により死亡。

*この日の前日から強風注意報が発表されており、本事故当時も継続中であった。
*本事故当時の平均風速は約7.5m/s、水温は約8.9℃であった。



参照:Google Earth

*本事故に関する運輸安全委員会の報告書はこちら



【ポイント】
 航行前に強風注意報が発令されていたこと、及び釣り場から引き返す際に、最寄りの港等に避難せずに遠く離れているマリーナまで帰航しようとしたことがポイントとして挙げられます。

 また、本件の乗船者2名は元々、免許が要らないミニボートを普段使用していて、ミニボートの場合は風速が4m/s以上の予報であれば出航を見合わせていました。
 この日は二人とも有給休暇であったので、どうしても出航したい思いが強く、ミニボートよりも大きなバスボートであれば多少荒れていても問題ないだろうと思いこみ、出航を断行。
 このエリアでのレジャーは2名とも本件が初めてでありました。

 釣り開始後、風と波が強くなってきたにもかかわらず、取りやめることなく場所を移動するだけに留まったのが今回の死亡事故の原因と言えます。



【教訓】

 まずは、出航前に気象・海象情報をしっかりと調査しておくことが重要です。
現在の天候や風速だけでなく、これからの予報や発令している警報・注意報も必ず確認するようにしましょう。

 気象・海象・航路情報の確認方法は、MICS(スマートフォン用サイト)や海しるを有効活用しましょう。
 ”風速が3m/s以上は出航しない”というように、出航するかしないかの明確な基準を作っておくと良いでしょう。

 また、出航後に天候が悪化した場合には、直ちに最寄りの港等に避難する必要があります。
 マリーナ(出航地)に早く帰らないといけないという思いが強くなる気持ちはわかりますが、出航地から遠く離れていた場合は最寄りに避難できる場所があるか確認しましょう。





【まとめ】

 今回で同テーマのコラム第3弾となりました。

 近年コロナが落ち着きを見せ始め、夏季シーズンはゲレンデが小型船舶で賑わう景色が戻りつつあります。

 小型船舶の事故の現状として、事故全体に対するプレジャーボートの割合は年々増加傾向にあります。

 事故を起こさないために、無理な決行はせず、当日の状況や予報を考慮し、航行中も見張りを適切に常時行うよう心がけましょう。


 なお、船舶免許は5年に一度、更新をして頂く必要がございます。
 講習内容にも小型船舶の事故に関する内容が含まれております。

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2024年3月 執筆




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